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日本各地の伝統食!健康の鍵は、生活を送る場所にある
地元の食材をふんだんに使った 鹿児島の郷土料理

地域に根付いた食材を使う郷土料理から、健康に過ごすためのヒントを探る当記事。
今回は、“西郷どん”でおなじみの鹿児島県の郷土料理を紹介します。
温暖な気候で、自然豊かな地域ですが、夏は猛暑に見舞われます。
そんな暑さを乗り越えるために、鹿児島の人々はどんな料理を食べているのでしょうか。
取材・文◎本誌編集部 取材協力◎益山尚子・濱田あい子・水原敦子 料理写真◎水原敦子

3つの気候区分が重なる豊かな風土が生んだ料理

桜島と“西郷どん”で知られる鹿児島県。最南端の与論島や屋久島、種子島などの離島が多く、南北に約600km広がっているため、県内でも南北で寒暖の差があります。

気候区分は主に温帯と亜熱帯ですが、屋久島には冷温帯の側面もあります。九州の中では積雪も多く、バリエーション豊かな風土であると言えるでしょう。

そんな鹿児島の食べ物のなかで、多くの人が思い浮かべるのは、さつま芋や桜島大根など、西郷どんのようにどっしりとしたもの。しかし、実は日本で有数のお茶の生産地。また、さとうきびや里芋、柑橘類、パッションフルーツなども有名です。

水産物では、鰹。鰹節は江戸時代以前から作られていたそうで、その生産高は全国一です。南薩摩エリアにある枕崎港は日本有数の漁港で、鰹だけではない、豊富な水産品も特徴で、旬の魚を使った料理やこれらのだしを使った汁物も古くから親しまれてきました。

このように豊かな農水産物に恵まれた鹿児島ですが、離島の方ではそうめんを炒めて食べる「油ぞうめん」を筆頭に、油をたくさん使ったものを食べることが多いと、鹿児島で活躍する管理栄養士の益山尚子さんは言います。隣の沖縄の影響が色濃いことと、暑さでバテないようにという先人の知恵があるのでしょう。

ミネラルが不足しがちな夏に重宝された“トイモガラ”

一方、九州本土のエリアでは煮物が多いそう。煮物向きの野菜が多いからでしょう。さつま芋のでんぷんで作る透明な団子が入った“でんぷんだご煮”は、野菜をふんだんに使ったヘルシーな郷土料理として、観光客にも人気です。

かつて鹿児島では、冬野菜が多く、夏野菜は少なかったそう。そのため、冬に穫れた大根を切り干し大根などにして保存し、夏に食べていました。また、夏野菜の1つであるハスイモの葉柄“トイモガラ”は、ミネラルが豊富に含まれており、酢の物や和え物、炒め物と、さまざまな調理法で食べられてきました。

鹿児島黒牛や黒豚が有名になり、畜産が盛んなイメージもありますが、かつてたんぱく源の中心となっていたのは魚と鶏。鹿児島といえば、さつま揚げ(地元の人は「つけあげ」と呼ぶ)も有名ですが、これもメインの材料は魚です。

「昔は小さな魚を買ってきて、自宅ですり身にし、好みの野菜を入れて、その家ごとのさつま揚げを作っていました。しかし、今では出来合いのものを買ってくるという家が多いようです」

「さつま揚げ」というと、少し塩気の効いたイメージがありますが、鹿児島のさつま揚げは砂糖が入っていて甘いのだそう。

明治以前の反動から甘い食べ物が多くなった!?

さつま揚げだけでなく、鹿児島の食べ物は甘い物が多いそうです。醤油も甘味の強いものが一般的で、黒砂糖を調味料として使うことが多い。

“がね”という料理はてんぷらですが、黒砂糖の入った甘い衣が鹿児島ならでは。また、かるかん、ケセン団子、いこもちなどの甘いお菓子が伝統食に多いのも特徴でしょう。その理由を益山さんはこう話します。

「さとうきびが名産品の鹿児島でも、明治以前は砂糖が貴重品でした。しかし、時代の流れとともに砂糖が普及すると、それまでの反動からどんどん砂糖を使うようになりました」

東洋医学では、“砂糖は身体を冷やす食材”と言われますが、暑さから自然に身体を冷やすものを人々が求めたという側面もあるのかもしれません。

しかし、砂糖の多い食生活のためか、鹿児島県民の糖尿病罹患率は全国平均より高めです。そのことに危機感を覚えた益山さんは、行政や自治体への栄養指導や、子どもの食育、離乳食の指導などを行っていますが、鹿児島の人にとって砂糖を減らすのは、なかなか難しいようです。

食品の加工技術の進歩によって、手作りしなくなったり、レシピに加工品を取り入れたりはしていますが、鹿児島の人は普段から郷土料理を食べることが多いのだそう。その甲斐あってか、鹿児島県民の健康寿命(健康上問題なく日常生活を送ることができる期間)は、男性が全国7位、女性も10位。男女ともに全国平均を大きく上回っています。

先人から受け継がれてきた知恵を活かしつつ、ライフスタイルに合わせて変化してきた鹿児島の郷土料理。私たちもこうした柔軟性を見習って、健康のための食生活を実践していきましょう。

レシピ① でんぷんだご汁

●材料
干し椎茸・・・・・・中1枚
いりこ・・・・・・・20g
にんじん・・・・・・10g
白菜・・・・・・・・50g
ねぎ・・・・・・・・100g
さつま芋でんぷん・・100g
醤油・・・・・・・・小さじ1
酒・・・・・・・・・小さじ1

●作り方
1.干し椎茸を水で戻して、食べやすい大きさに切る。
2.鍋に干し椎茸の戻し汁(適量)といりこを入れ、だし汁をとる。
3.にんじんを薄切りにし、白菜はざく切り、ねぎは斜め切りにする。
4.2のだし汁に椎茸とにんじんを入れ、一煮立ちさせたら白菜を入れる。
5.ボールにさつま芋でんぷんを入れ、おたま1杯分の熱いだし汁を入れ、箸でさっと混ぜ合わせる。
6.5を一口分ずつスプーンですくって団子状にし、鍋に入れる。
7.6で鍋に入れた団子に火が通り、透明になってきたら、醤油、酒を加えて味を調え、ねぎをちらす。

●POINT
団子が半透明に仕上がるものは、さつま芋でんぷんに葛粉をブレンドしている。
葛粉をブレンドした市販品は多く、身体を温める効果がある。

レシピ② トイモガラの酢の物

●材料
トイモガラ・・・・50g
塩・・・・・・・・小さじ1/2
醤油・・・・・・・小さじ1
酢・・・・・・・・小さじ1
白砂糖・・・・・・小さじ1

●作り方
1.トイモガラは皮を剥き、薄く切って水にさらす。
2.1を水切りし、塩を加えて、揉み込んだら、しばらく置いておく。
3.2を水洗いし、よく水気を絞る。
4.3を醤油・酢・白砂糖で和える。

●POINT
トイモガラは鹿児島の伝統野菜の1つ。ハスイモの葉柄(葉を支える茎)のことをいう。
昔は数少ない夏野菜の1つとして、重宝されてきたトイモガラ。ミネラル豊富で、独特の歯ごたえがあり、酢の物だけではなく炒め物や煮物などにも使われている。

プロフィール益山尚子(ますやまなおこ)さん

管理栄養士。鹿児島県・大隅エリアを中心に、フリーの栄養士として地域の食生活改善に携わる。介護予防の栄養指導や離乳食指導などのライフステージに合わせた食生活改善指導、調理教室の講師など25年以上にわたって活動。平成28年度栄養関連功労者知事表彰、平成29年度栄養関係功労者厚生労働大臣表彰を受ける。